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小話:下書き1

下書き

誰が使うわけでもないからだろう、掃除している様子はない。

そこら中に鳥の糞がこびりついているし、風で運ばれたのか砂が積もって歩くとジャリジャリする。明らかに人工物なごみ―コンビニ袋やら何やら―は、これも風によるものだろうか。あるいは業者や、今の僕たちのように忍び込んだ誰かが放置していったのかもしれない。

「うん、開放的だねっ」

それでも、彼女のテンションは高い。僕もまあ、楽しくないといえば嘘になる。朝6時の眠気と朝日と肌寒さ。僕は彼女に誘われて、学校の屋上にいる。

 

給水タンクだかフェンスだかを点検する業者が、鍵をかけ忘れていったらしい。なぜそんなことが分かったのか聞いたところ、常に屋上に行くチャンスを狙って、何かの間違いで鍵が開いていないか、定期的にチェックしていたのだという。

いつもより3割増しのテンションで、しかし周囲を憚って小声でそれを報告した彼女は、僕に次のような「屋上潜入計画」を提案してきた。

その1。本日放課後、学校に居残り、誰もいなくなるのを待つ。

その2。夜明けとともに屋上に潜入する。

僕の問い:なぜ今日? 彼女の答え:明日じゃ鍵閉められるかもしれないでしょ。

問い:セキュリティとかあるのでは。答え:ああいうのって外からの侵入者対策なんじゃないの? 始めから中にいれば大丈夫だよきっと。

問い:ひとりで行け。答え:夜の学校に一人とか怖いじゃん?

…分かってくれるとは思うのだけれど、一般的な高校生男子が、ちょっとした非日常的体験の予感に釣られたとしても無理はない。憎からず思っている同級生からのお誘いなら、なおさらだ。